ARCHITANZ 2014 3月公演


香港バレエ団 日本人ダンサー 江上悠&高比良洋よりコメント
この度の「Architanz2014 3月公演」における香港バレエ団初来日公演は、僕自身にとって奇跡的なものを感じると同時に、宿命性をも強く感じています。
ロンドン留学を経て香港バレエ団に入団してから12年が経とうとしている今、僕にとって特筆すべきことの一つは、香港でユーリ・ンと出会い、彼の作品に出演し、さらに振付家として彼に見いだされて以来続いている彼との共同振付作業(香港バレエで発表した全幕作品、”ファイアー・クラッカー”と”蛙の王子様”)、また帰省中に偶然にもユーリ・ンとゆかりの深いArchitanzでのクラスやワークショップを体験したことが挙げられます。
ユーリと僕との共通点は、振付に対する興味、そして同じバレエ学校(ロイヤル・バレエ・スクール)を卒業したことですが、それ以前に、東洋人として西洋の芸術に憧れ、その文化に身を投じたという根本的な礎があると思います。
ユーリは、常に自分のルーツである香港または中国の背景を作品に反映させ、香港のダンス界から作品を発信する意義を自らに問い続けて来たアーティストで、同じ東洋人として、僕が彼から得る刺激は計り知れないのですが、彼の影響力はそれだけではなく、彼は創作中常に、「『今』『ここ』で、あなたがが踊っている理由」を問いかけるアーティストですが、ユーリの今回のテーマは「継承」だそうです。再演に再演を重ねて来たBoy Storyですが、今現在、初演のオリジナルキャストや再演時のキャスト達が香港に集まり、リハーサルに参加してくれています。
今回ユーリとArchitanzにとってベースとも言え、記念碑的作品である”Boy Story”、そして2012年に香港で香港バレエ団がアジアで初演した際に振付家のナチョ・デュアト自身が賞賛してくれた”Castrati” (今回僕はバレエマスター助手を務めるので出演しませんが)を上演する機会を日本で与えられることは、奇跡であるのか、宿命であるのか。

Architanzの公演では、僕自身は過去に2012年のArchitanz10周年記念公演と、2013年ローザンヌ・ガラでウヴェ・ショルツ(今回の公演でも彼の作品が素晴らしいダンサー達により上演されるのが楽しみです)の"ラフマニノフ、ピアノ・コンチェルト第3番"に出演させて頂き、その際に素晴らしい共演者達、指導者のジョバンニ・ディパルマと木村規予香さんから沢山のことを学ばせて頂きました。
そこで出会ったArchitanzの素敵なスタッフの方々と共に、さらに今回、香港バレエ団の一員としてこの公演に参加させて頂けることを誇りに思うと同時に、この「繋がり」が未来に向けて発展して行くことを、心から祈っています。

江上悠



この度は『Architanz2014 3月公演』に香港バレエ団の一員として来日上演出来る事を大変嬉しく思います。僕は、中国(北京舞踊学校付属中学、中国国家バレエ団)と香港の地で、合わせて10年間の時間を過ごしました。
2011年の大震災を地元の家族やお世話になった方々、友人達が経験し、僕は日本を想う気持ちが一層強くなりました。いつか自分の踊りで、その想いを伝えたいと思っていた所で、今回の様な機会を与えて頂けた事は、僕の舞踊生活の中で凄く大きな意味を持っています。
また、『香港バレエ団』初の来日公演の一員として参加できることも、僕にとって大きな意味があると思っています。中国と日本での経験が自分の踊りのルーツであると感じていますが、今回その二つの国の舞踊交流に自分が携われる事を、大変嬉しく思うと同様責任も感じます。
そして、その機会を与えて下さったArchitanzとユーリ・ン には本当に感謝をしています。
ユーリとの出会いは10年前に溯ります。当時まだ入団間もない僕に彼の作品の重要な役を与えてくれ、いつもその優しい笑顔で接してくれて、僕に自信を持たせてくれました。
その後も彼と一緒に仕事をする中で、『踊る』と言う事の意味を深く考えさせられ、彼の芸術に対する情熱を感じてきました。その彼の代表作『Boy Story』は、彼とArchitanzにとっても大変重要な作品で、その作品を今回の公演で踊れる事は、この上なく嬉しいことです。
そしてもう一作『Castrati』は Nacho Duatoの代表作。男性ダンサー9人だけで踊る異例ともいえる作品ですが、今や香港バレエを代表する作品にもなっています。
優れた男性ダンサーが揃っている香港バレエ団をこの様な形で皆様に紹介できる事を本当に喜ばしく思いますし、もっと色んな方に『香港バレエ団』を知って頂きたいと思います。

最後に、このような素晴らしい舞台を準備して下さった Architanzのスタッフの方々に深く感謝すると共に、御来場頂くお客様にも素敵な一時を過ごして頂けます様に舞台上で楽しみたいと思います。

高比良 洋